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2019年12月31日 (火)

宇宙的目覚めの時代へ・・逆境で生まれる新文明

龍村仁さんによると、かつてアポロ9号の乗組員だったラッセル・シュワイカートは次のように語ったことがあったという。 




 



「私達人類は今、宇宙的誕生(コズミックバース)、宇宙的目覚めの時代にさしかかっている」

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 これは、「赤ちゃん(人類)は、生まれ出て(宇宙から地球を見て)初めてお母さん(地球)を自分とは別の存在である、と認識し、そこから、母の一方通行の愛に甘えるだけではなく、母に対する感謝の気持ちや愛を育み、責任感を持つようになる」(龍村さん)という意味だそうだ。

 

 とすれば、現代文明がトインビーの云う様々な挑戦を受けている現在の逆境は、人類が宇宙的に誕生するための「陣痛」であるとも言える。

 

 現在の地球上の人類は大きな逆境にありながらも、その力を借りながら新しい文明の形をつくろうとしているのである。

 

フランスの哲学者、ベルクソンによると、生命はあらゆる逆境を乗り越える力をもっており、創造的に進化しようとしていると云う。



 

 まさに東日本大震災や気候変動に伴う災害の痛手から立ち上がろうとしておられる皆様の活躍に私たちが感動するのも、どんな逆境に遭いながらも、それを乗り越えようとしている生命の力、「創造的進化」の力に共感するからに違いない。以下、「逆境で生まれる新文明」1回目の序論と2回目以後の論考である。

 

人類は「宇宙的目覚めの時代」へ入ろうとしているのである。

 

 


平成23年4月18日付の日経新聞には、「トインビーをもう一度・・不都合な真実に『応戦』を」と題した興味深いコラム(土谷英夫氏)が掲載されていいた。

 

 そのコラムによると、英国の歴史家トインビーは文明は逆境から生まれると説いていたという。


・・文明は自然的環境や人間的環境からの挑戦(チャレンジ)に人々の応戦(レスポンス)が成功したときに興る。

 

例えば「古代エジプト文明」は、気候の変化による砂漠化で生存の危機に直面した人々が、ナイル川沿いの沼沢地を豊かな農地に変えることで生まれた。

・・トインビー流に言えば、大地震・大津波という自然的環境からの挑戦と、原子力エネルギーに依存する人間的環境からの挑戦を同時に受けているのが、いまの日本。間違いなく66年前の「敗戦」以来の逆境だ。

・・「窮すればすなわち変じ、変ずればすなわち通ず」という「易経」の一節は、トインビーの文明論の核心をよく言い当てている。

 

明治維新でも、終戦後でも、国のかたちを変える改革を断行した。いま変わらなければ、日本は衰退する。

 また、トインビーは挫折した文明の共通項に「自己決定能力の喪失」をあげているという。状況に振り回され、応戦できない文明は衰退するというわけである。 
  
 換言すれば、ポジティブに「応戦」できれば、今回の大震災は新しい文明やパラダイムが生まれてくる可能性もあるのではないだろうか。

 

 例えば惑星間というより大きな視点から見るとき、大震災後、下記の三つのパラダイム転換が起きてきているように思う。

 

 
①拡大したコミュニティー意識の誕生
②「自然と共生した文明」への進化
③新しい自己像の萌芽

 

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逆境で生まれる新文明2・・拡大したコミュニティー意識の誕生

 

逆境で生まれる新文明3・・「自然と共生した文明」への進化

 

逆境で生まれる新文明4・・新しい自己像の萌芽

 

逆境で生まれる新文明5・・十牛図による新しい自分の発見

 

逆境で生まれる新文明6・・惑星的思考へのシフト

 

逆境で生まれる新文明7・・ラズロ博士の「ワールドシフト」

 

逆境で生まれる新文明8・・課題解決先進国・日本文明のミッション

 

逆境で生まれる新文明9・・ジネン(自然)の思想

 

逆境で生まれる新文明10・・宇宙的目覚めの時代

 

逆境で生まれる新文明11・・ベルクソンの「精神のエネルギー」 

 

逆境で生まれる新文明12・・新しい精神の科学 

 

逆境で生まれる新文明13・・新しい精神の科学2 

 

逆境で生まれる新文明14・・慈悲の文明(悟りの文明)の誕生

 

逆境で生まれる新文明15・・祈りの文明へ・・科学と宗教の対話

 

逆境で生まれる新文明16・・祈りによる高次元の開拓 

 

逆境で生まれる新文明17・・村上和雄氏の説く魂と遺伝子の法則 

 

逆境で生まれる新文明18・・「サムシング・グレート」から考える 

 

逆境で生まれる新文明19・・コスモス(宇宙)の一貫性 

 

逆境で生まれる新文明20・・思考のすごい力 

 

逆境で生まれる新文明21・・月面上の思索

 

逆境で生まれる新文明22・・創造的に進化する宇宙

 

逆境で生まれる新文明最終回・・「知られざる大陸」を求めて

2019年12月26日 (木)

「意識と存在の構造モデル」5・・完全な神との合一


 井筒俊彦の「意識と存在の構造モデル」(三角形)を使うと、様々な神秘家や哲人たちの悟りに至る道を概観することができるようになる。
 例えばベルクソンの晩年の大作「道徳と宗教の二つの源泉」では、キリスト教の神秘家たちが次の段階を踏んで神との合一に至ったことを紹介している。

 

 ベルクソンはこの神秘家たちこそは「完全な神秘主義」に至っていたとする。


①転身のための序曲
     ↓
②前方への跳躍のための「闇夜」の経験
     ↓
③完全な神との合一

 

  この③の「完全な神との合一」の地点が、井筒のモデルで言えば、三角形の頂点にあたる。


 あらゆる神秘家は転身のきっかけとなる出来事を体験するとともに、魂の「闇夜」の体験をしながら、さらに三角形の頂点を目指して向かって左側の辺を上昇していく。


 そして「絶対無」という頂点に達した魂は、今度は右側の辺を自ずと下降していくことになる。


 具体的には、ベルクソンは「完全な神秘主義」を実現した人々として、キリスト教の聖パウロ、聖テレジア(スペインの神秘家でカルメル山修道団の創始者)、シェナの聖カテリナ、聖フランシス、ジャンヌ・ダルクなどの名前をあげる。


ベルクソンはそれらの個々の事例には深入りすることなく、「完全な神秘主義」に至る特徴を指摘している。


 特に十六世紀スペインのカルメル会的神秘主義には、井筒俊彦と同じく西洋の神秘主義におけるクライマックスを見ていたようで、彼が晩年、その研究のためにスペイン語の修得に努めた話は有名だ。


 ベルクソンは「完全な神秘主義」に至った魂の状態を次のように詳説している。


もう、ここからあとは、魂にとって満ち溢れてくる生があるだけだと言おう。
 
あるものはただ、尋常ならぬ、巨大なエランである。
 
魂は抗うに術もない力に押され、魂はこのうえもなく広大な企図のうちへ投げ込まれる。
 
魂の全能力が静かに昂揚する結果、魂の視界は広げられ、魂は弱くとも、その実現する力は逞しくなる。
 
わけても、魂は以前とは違ってすべてを単純に見るようになっており、この単純さが言行いずれにおいても目立ってくる。
 
魂は、この単純無雑に導かれて、錯雑したーーとはいえ、その目にははいりさえしまいがーーさまざまな状況を突破してゆくのである。
 
……こうした魂の自由は神の活動と一つなのである。
 
この努力、堅忍力や持久を見れば、そこには精力の巨大な消費のあることがわかるが、このエネルギーは、必要なだけすぐさま恵与される。
 
なぜなら、そこに必要な、惜しみなき活力の充溢が流れ出てくる源泉は、それこそ生の源泉そのものにほかならぬのだから。
 
ここに至れば、さまざまな観照も、もはやはるかな背後にある
ここでは魂はすでに神性で満たされているのだから、神格の顕現は魂の外からのものではありえない。

   

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