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「自己克服の道」・・小林秀雄の批評の基準について

 およそ小林秀雄が描いた天才たちのドラマは、自分の置かれた境遇と戦い、時代の思潮と戦い、そして自分自身とも戦った「自己克服の道」を極めたものが多い。

 小林秀雄が作品を批評する基準も、この自分との戦いがあるかどうか・・にあったことは、講演などで自ら触れている。

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 この「自己克服の道」をまさに命がけで行った一人が、画家のゴッホだった。

 彼の場合、その道の半ばで倒れた感はあるが、その純粋さ、激しさでは群を抜いているものがある。

 小林自身も次のようにゴッホについて書いているのだ。

 ・・批評は、極めて鋭く、自分に対して一番厳しい。

ゴッホは、作家にもなればなれたかもしれない。

言葉を扱っても、彼の表現力は、強く豊かで、天賦の才を示しているが、もっと驚くべきものは、彼の天賦の無私であろう。

・・正気と狂気との交替という脅迫に耐える生存の全的な意識が、彼には必要だったのである。

それは、常に勝つとは限らぬ休みのない自己克服の道だったのであり、そういう究極の明識を得ては、又、これを失う様は、明滅する強い光のように、彼の書簡集に現れている。・・「ゴッホ」

Goho


 この「自己克服の道」は、「自己超越の道」とも呼びたいし、神秘家の道にもつながっているのではないか。

 それにしても、「休みのない自己克服の道」を若き日より歩んできたのは、他ならぬ小林自身ではなかったか。

 彼はその“自分との戦い”をゴッホはもとより、ドストエフスキーや西行たちにも発見して、共鳴するのである。

 彼にとって批評とは畢竟、自分の命と天才たちの命の共鳴であり、「自己超越の道」において彼らは一つになって同じ協奏曲を奏でていた・・とも言えるのである。

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     ゴッホの複製画の前で

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小林秀雄」カテゴリの記事

コメント

小林秀雄の望んでいたことは、「神秘道」にも通じていたのですね。

これは井筒俊彦との共通項でもあると思います。

それほど彼らの真実の求め方には激しいものがあったということでしょう。

投稿: 無限 | 2015年12月24日 (木) 12時33分

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