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「新しい自己像の再構築・・十牛図に観る真の自分

 

 現代の激変する世界の中で問われているのが、「新しい自己像」の再構築である。

 井筒俊彦博士の言う我々の実存の中心を『自我』のレベルから『自己』のレベルに移行」させるためには、意識の焦点を表層から深層へと深めていく必要がある。

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 井筒博士の場合、イブン・アラビーなどのスーフィーや東洋哲学の途轍もなく広い精神的鉱脈を探りながら、深層の自己へと深めていくには共通したパターンがあることを明らかにした。

 詳しくは「イスラーム哲学の原像」という名著を参照いただきたいが、簡単に言うと、多くの哲人・神秘家に共通するのが、往相・還相の悟りへの道を歩むということである。

 井筒博士はこの中で「意識と存在の構造モデル」と題して、単純な三角形の図を描いている。すなわち絶対無としての存在が三角形の頂点として上に置き、感覚的、知覚的事物が底辺として下にくることになる。

 つまり多くの哲人・神秘家たちは三角形の向かって左側の辺をひたすら登って、意識と存在のゼロ・ポイントを目指そうとする。

そして遂に絶対無の頂点を極めた哲人たちは、今度は右側の辺をひたすら降りて今度はコトバで「無から有」を生み出そうとする。

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 この意識と存在の構造モデルは、仏教の禅で言えば「十牛図」が見事に現しているように思う。

 横山紘一氏「十牛図入門--『新しい自分』への道」によると、この十牛図には「自己究明」「生死解決」「他者救済」という人生の三大目的が現されているという。

 ちなみにこの悟りのマップとも言うべき「十牛図」では、牛に象徴される悟りを求める少年が牛の足跡を見つけ、居場所を発見し、つかまえ、飼い慣らし、牛の背に乗って家に帰ってゆくプロセスを前半の6段階が表している。

(①尋牛②見跡③見牛④得牛⑤牧牛⑥騎牛帰家)

 、⑦ の「忘牛存人」になると一転してその“ 悟りの象徴” であるところの牛が消えてしまい、⑧ の「人牛倶忘」に至っては牛のみならず人も忘れ去られて全くの白紙が描かれている。

そして⑨ の「返本還源」では川が流れ、花が咲く、自我を超えた自然の姿が描かれ、⑩の「入廓垂手」(にってんすいしゅ)では世間の路で少年と老人が出合うシーンが描かれている。

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 つまりこの「十牛図」では、“頓得の悟り”からいろいろの段階を経て悟りが深まっていく過程が図形化されており、悟り= 牛を追いかけていたことも忘れて無我の境に入るとともに、

 

自然や人との一体感を自覚することが“ 本当の悟り” であると示されているのである。

 横山氏の言葉を借りれば、この「十牛図」には三種類の自分が描かれているという。

 

 1.偽りの自分

 2.新しい自分

 3.真の自分

 とすれば、大震災後の激変は、「偽りの自分」を脱ぎ捨てて「新しい自分」を発見し、さらには宇宙と一つの「真の自分」を見いだす「悟りの機会」を与えたとも言えるのである。

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