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「叡知の泉」としての小林秀雄・・

 祖父の小林は、生前こんな話をしてくれた。

「本というのは何回も読めるのだから安いものだぞ。

何回も読み返していると、その年代によって感じることも違う。

一冊の本で何度もいいことがあるんだから、これほど安いものはないじゃないか」

 発売当時、小林の著書『本居宣長』は4千円くらいしたが、

「4千円でも、10回読めば一回400円だ。

分からなければ何度でも読んでいいのだし、大体、何度も読まないと分からないように書いてあるんだからな」

 と笑っていた。

そのときはつられて笑っていたが、「一回読んで分かるほど浅はかなことは書いていないんだ」と、真面目に話したときの顔を思い出した。

自分の考えの深さに誇りを持ち、文章の練り方にも自信を持っていたことが伝わってくる。

 これは小林秀雄の孫であり、白洲次郎・白洲正子の孫でもある白洲信哉氏の白洲家の流儀 (小学館101新書 30)からの引用である。

「何度でも読む」ということでは、小林の「私の人生観」「本居宣長」「モーツアルト」「西行」などをもう何回読んだか、もう分からないくらい繰り返し繙いている。

 すると、そのたびにまた新たな発見と驚きとがある。

 最近では「私の人生観」をそれこそ本がボロボロになるまで読んでいる。

 この作品は哲学者にとっても、読めば読むほど味の出てくる“叡智の泉”だと思う。

 確か水上勉氏の言葉だった思うが、小林の文章はまさに

 「汲めども汲めども枯れない井戸の泉」である。

 この“叡知の泉”で、今までどんなに多くの気づきと生きる力とをもらったことであろうか。

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     初島にて

白洲家の流儀 (小学館101新書 30) Book 白洲家の流儀 (小学館101新書 30)

著者:白洲 信哉
販売元:小学館

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