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言葉には姿、形というものもある・・小林秀雄

 言葉には、意味もあるが、姿、形というものもある、ということをよく心に留めて下さい。

 小林秀雄「美を求める心」

 これは、山部赤人の名歌、

 「田児(たご)の浦ゆ打出でて見れば真白にぞ富士の高嶺に雪はふりける」

 について解説しながら、説いた有名な言葉だ。

 小林によると、優れた歌人は「言い現し難い感動を、絵かきが色を、音楽家が音を使うのと同じ意味合いで、言葉を使って現そうと工夫」しているという。

 それも歌人は、誰もが使っている「日常の言葉を、綿密に選択して、これを様々に組み合わせて、はっきりした歌の姿を、詩の型を作り上げる」のである。

 簡単に言えば、「姿のいい人があるように、姿のいい歌がある」と云うのである。

 小林の批評文も歌ではないが、姿のいい形というものが確かにある。

 彼は、自分の批評で意味を伝達しようとしたのではない。

 天才達の作品と共鳴し、感動した心の動きを批評という特殊な形で、しかも言霊のある言葉で伝えようとしたのである。

  つまり、小林の批評には、「意味としての言葉」ではなく、「姿としての言葉」が満ちている。

 心あるものは、頭を使うのではなく、自分の目でその「姿としての言葉」を味わい、自分の耳でその「言霊としての言葉」を聞くべし・・である。

Kobayashigoho

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