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2012年2月15日 (水)

「生命論パラダイム」の時代へ・・3

 私たち人類の一大特徴は、物事を要素に還元して分離する思考法にある。

 まさしく近代科学はこの要素還元主義によって、世界のすべてを細かく分けて、分析してこの世界の成り立ちを研究してきたわけだが、ベルクソンによると、物質を対象にした学問ではこの思考法は十分に通用するが、こと生命や世界の真相といった常に動き、生長しているものを対象としたものには不適切であるという。

 分析するには、それらを一度、動かない死物として捉えることが必要だからだ。それに対してベルクソンは直観という方法が大切なことを次のように言う。

 実証的科学の普通の機能が分析であることはわかりやすい。

 したがって実証的科学はなかんずく記号を使って作業をする。

 自然科学のうちでもっとも具体的な生物学でさえも、取り扱うものは、生物やその諸器官や解剖学的要素の目に見える形態に限られている。

生物学はそれらの形態を比較し、複雑なものを簡単なものへ還元するのであり、つづめて言えば、生命の働きを、いわばその単なる目に見える記号のうちで研究するのである。

ある実在を相対的に知るのではなくて絶対的に把握し、外部のもろもろの見地から眺めるのではなくて実在そのものの内へ身を移し、分析を行なうのではなくてその直観を得る方法があるとすれば、要するに表現、翻訳ないし記号的再現によらずに捕捉する方法があるとすれば、形而上学こそはその方法である。

形而上学はしたがって、記号なしにすまそうとする科学なのである。
ベルクソン(『形而上学入門』)

 簡単にいうと、「生命論パラダイム」にあっては、「機械論パラダイム」の還元主義による分離感から、直観による「全体感」というのをより大切にしようとするのである。

 ノーベル物理学者の江崎玲於奈博士によると、20世紀の科学の大きな成果としては、①原子の構造の解明 ②生物が遺伝子を基に組み立てられているーーという大きな発見があったという。

「いずれも対象を細かい要素に分けて分析する『還元論』が成功を収めた。
 その反対は、要素の集まりからなるシステムの特性を研究する『全体論』だ。音楽に例えると、個々の楽器よりオーケストラの響きに注目する。今世紀は全体論の重要性が増すだろう」・・江崎博士(『読売新聞』平成16年12月1日号)
 

 つまり21世紀の科学では「還元論」よりも、物の全体を把握する「全体論」が必要というわけである。村上和雄教授はこのような科学のことを「ナイト・サイエンス」とも呼ばれている。

 ラズローの言葉を借りれば、これからの科学は世界の「一貫性」「全一性」に注目するようになる。つまり、世界をあたかも一つの生命の営みとして見るようになるのが「生命論パラダイム」なのだ。

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