神秘の夜の旅・・3
「神秘の夜」は、井筒俊彦の「意識と存在の構造モデル」にあっては、どうしても通らなければならない「無の門関」でもある。
彼の構造モデルにあっては、あらゆる神秘家や哲人は三角形のモデルの頂点を通らなければ、昼という現象を去って、「実在という夜」に推参することはできない。
「夜の世界」では、昼間の五感を中心とした判断・推測は通用しない。
むしろ、一度、「昼の世界」の先入観をきれいに流し去って、一度、無になる必要がある。
そして無になるだけでなく、その世界に超入して「神秘の夜の世界」を実際に旅する必要があるのだ。
前にも触れたが、井筒俊彦や小林秀雄がドストエフスキーの世界に見ていたのは、この「夜の世界」における魂の復活である。
一度、死んで甦る必要があるのだ。
ドストエフスキーは、“癲癇”(てんかん)という切実な持病の体験によって、まさに「神秘の夜」を旅し、その「夜の国」の「永遠の秩序」を垣間見ていた。
・・その発作が今まさに始まろうとする数秒間、彼はこの世ならぬ光景を覗き見た。
永遠性の直観、「永遠調和」の体験。それはまさしく黙示録に「その時、もはや時間は無かるべし」と云われている歓喜と恐怖の数秒間だ。
それは来世の永遠性ではなくて、この現世に於ける永遠の生命なのだ。人生にはある瞬間があって、その瞬間に到来すると時間がはたと停止して、そのまま永遠になるのだ。
これこそ東西の別なく古来、神秘道の修行者達が最高の境地として希求し、それの体得のために一生を賭して努力する「永遠の今」の体験でなくて何だろう。
井筒俊彦『ロシア的人間』第13章「ドストエフスキー」より
この「永遠の今」の体験による「新しい人間」の誕生こそが、ドストエフスキーの一貫して追求したテーマであり、「神秘の夜の旅」の目的なのである。
ハイデルベルクの旅・・
« 「運をつかむ習慣」総集編 | トップページ | マイナスをプラスにする方法・・3 »
「小林秀雄」カテゴリの記事
- 小林秀雄のプラトン論・・人生の大事は忽念と悟ること(2019.08.27)
- 悠然たるネヴァ河と小林秀雄(2018.12.04)
- 井筒俊彦と小林秀雄の共通点・・対話による叡智の発掘(2018.11.06)
- 歴史の背後には俳優をあやつる神様が居る・・小林秀雄(2018.09.07)
- 小林秀雄VS岡潔・・叡知の対話(2018.07.03)
「哲学」カテゴリの記事
- 意識と存在の構造モデル3・・無の関門を通る(2019.10.25)
- 井筒俊彦と小林秀雄の共通点・・対話による叡智の発掘(2019.02.19)
- 「スーパーセルフ」の開発が人類を救済する・・(2019.01.02)
- 叡智の哲学者・井筒俊彦論・・総集編(2018.12.04)
- 逆境で生まれる新文明・・新しい自己像の誕生(2018.09.18)
「ドストエフスキー」カテゴリの記事
- 一枚の葉っぱに全宇宙を見る・・ドストエフスキーの幸福論(2019.05.18)
- ドストエフスキーの「永遠の今」の体験(2018.08.17)
- 一枚の葉っぱに全宇宙を見る(2018.03.19)
- ドストエフスキーの創造した天使・・アリョーシャの復活の体験(2017.05.25)
- ドストエフスキーの「永遠の今」の体験(2017.01.26)
この記事へのコメントは終了しました。
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 神秘の夜の旅・・3:
» 格安輸入家具によるインテリアのご提案 おしゃれな収納レイアウ [Perfect Housewife]
ハウスキーピング専門!お客様のプランを.かたちにします!お気軽に五臓ダンください! [続きを読む]
コメント