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2011年6月30日 (木)

叡知の哲学・・26

 井筒の後半生の一大テーマとも呼ぶべき、「東洋哲学の共時的構造化」は具体的には次のような操作で可能になる。

この操作は、ごく簡単に言えば、東洋の主要な哲学的諸伝統を、現在の時点で、一つの理念的平面に移し、空間的に配置しなおすことから始まる。

つまり、東洋哲学の諸伝統を、時間軸からはずし、それらを範型論的に組み変えることによって、それらすべてを構造的に包み込む一つの思想連関的空間を、人為的に創り出そうとするのだ。「意識と本質」・・「後記」

 井筒によると、こうして出来上がる思想空間は、当然「多極的重層的構造」をもつことになり、この構造体を分析することによって、いくつかの「基本的思想パターン」を取り出してくることができる。

 それは、「東洋人の哲学的思惟を深層的に規制する根源的なパターンであるはすだ」という。

 次に、この方法論的操作の第二弾として、こうして取り出された東洋哲学の根源的パターンのシステムを、一度そっくり己れの身に引き受けて主体化し、その基盤の上に、自分の東洋哲学的視座とでもいうべきものを打ち立てていくこと。

 これらの壮大な哲学の構想を、井筒はスイスのエラノス学会で西洋の哲人・学者たちと対話する中で得ていたようだ。『井筒俊彦--叡知の哲学』第八章「エラノス--彼方での対話」参照

 まさに井筒という哲学的巨人により、哲学のパルテノン宮殿とも呼ぶべき、惑星的な哲学のアゴラ(集会場)が現れようとしていたのである。

 しかしながら、東西の哲人や神秘家たちが一堂に会して、生きた対話を始めるためには、「東洋の様々な思想伝統を、ただ学問的に、文献学的に研究するだけ」では不十分である。

「さらにもう一歩進んで、東洋思想の諸伝統を我々自身の意識に内面化」する必要があるのだ。

 そして「そこにおのずから成立する東洋哲学の磁場のなかから、新しい哲学を世界的コンテクストにおいて生み出していく努力をし始めなければならない時期に、今、我々は来ているのではないか」というのである。

 このように多くの思想潮流を、「東洋哲学」の名に値する有機的統一体にまで纏め上げ、さらにそれを、世界の現在的状況のなかで、「過去志向的でなく未来志向的に、哲学的思惟の創造的原点となり得るような形」に展開させることが、「東洋哲学の共時的構造化」ということなのである。

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ハイデルベルクで東西の哲人の対話を夢想する 

 井筒俊彦博士の東洋哲学について

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