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小林秀雄とガブリエル・マルセルの対話・・10

 マルセルの説く「現存」について、さらに理解を進めるには、越知保夫という詩人の小林論は最適である。

 「在る」ということは、常に我々を驚かすものである。単なる物にすぎないものが、たとえば道とか樹木とか家屋とかが突然その存在の固有の相で、言いかえればそのものがそのようにあるということ自体で不意に我々に話しかけてくることがある。その時、その道その樹木その家屋はプレザンスである。それは存在し、かかるものとして現前する。そしてその固有の持続の中に我々をひき入れる。(「小林秀雄の『近代絵画』における『自然』」

 これはまさに詩人の「存在」観とも云えるものだが、「現前するものが不意に話しかけてくる」という感覚は、古代から自然の岩、山、川、滝、海などもご神体として拝んできた神道の世界観とも共鳴するところがある。

 マルセルに言わせれば、自然はもとより、人にも「現存」があるという。

 現存とはですね、「客体」としては構成されないでも、あり得るのです。たとえば人の「現存」を感ずることができるわけです。

ジュリアン・グリーンのことを思い出しますが、あの人はそういったことに感受性の強い人です。彼は、私がおそろしい自動車事故のあとで寝ていたとき、会いに来てくれましたが、その時部屋の中に誰かがいるのを感ずると言いました。おそらくは、私が失った愛する人たちのことなのでしょう。それは「現存」の一つの特徴なのです。「現存」として感じられた「現存」、客体化されていない、また、され得ないものです。

 このプレザンスの考え、体験が、神道の中心にあるのではないかと思われます。それで大変に興味を持ったわけですが、またむずかしいことでしょう。この考えは概念化できませんから。ですから科学とは全く離れているものです。科学の与件はすべて概念化しうるものです。

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 宮崎の神社にて

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