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批評の神髄・・33

 およそ小林秀雄が描いた天才たちのドラマは、自分の置かれた境遇と戦い、時代の思潮と戦い、自分のクセと戦い、そして自分自身とも戦った「自己克服の道」を極めたものが多い。

 小林秀雄が作品を批評する基準も、この自分との戦いがあるかどうか・・にあったことは、講演などで自ら触れている。

 この「自己克服の道」をまさに命がけで行った一人が、画家のゴッホだった。

 彼の場合、その道の半ばで倒れた感はあるが、その純粋さ、激しさでは群を抜いているものがある。

 小林自身も次のようにゴッホについて書いているのだ。

 ・・批評は、極めて鋭く、自分に対して一番厳しい。ゴッホは、作家にもなればなれたかもしれない。言葉を扱っても、彼の表現力は、強く豊かで、天賦の才を示しているが、もっと驚くべきものは、彼の天賦の無私であろう。

・・正気と狂気との交替という脅迫に耐える生存の全的な意識が、彼には必要だったのである。それは、常に勝つとは限らぬ休みのない自己克服の道だったのであり、そういう究極の明識を得ては、又、これを失う様は、明滅する強い光のように、彼の書簡集に現れている。・・「ゴッホ」

 この「自己克服の道」は、「自己超越の道」とも呼びたい神秘家の道にもつながっている。

 それにしても、「休みのない自己克服の道」を若き日より歩んできたのは、他ならぬ小林自身ではなかったか。

 彼はその“自分との戦い”をゴッホはもとより、ドストエフスキーや西行たちにも発見して、共鳴するのである。

 彼にとって批評とは畢竟、自分の命と天才たちの命の共鳴であり、「自己超越の道」において彼らは一つになって同じ協奏曲を奏でていた・・とも言えるのである。

 

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