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史上最強の対談3・・小林秀雄VS岡潔

 

小林 芸術の歴史を見ると、いつでも立ちかえるという運動が見られますね。アンプレッショニスム(印象主義)という運動はなるほど新運動だが、やはりあれは一つの復古運動なのです。

もういっぺん自然から出直せと言う主張でしょう。もういっぺん自然をじかに見ろと、モネーは、子供に帰ってもういっぺん睡蓮を見てみろといったわけでしょう。そのときの教養には、すで科学的な教養というものがありますから、光の波動だとなんとかいう教養がいっぱいありますから、そういう教養にひっかかりますが、とにかくもう一度戻るのです。

ピカソだって、あなたは無明ということをおっしゃったが、もう一つのモチーフがあるのです。それはやはり自然に帰れということですよ。これは土人に帰れ、子供に帰れということですが。

そういうことになるのも、これは決して歴史主義という思想に学ぶのではない、記憶を背負って生きなければならない人の心の構造自体から来ているように思えるのです。

原始時代がぼくの記憶のなかにあるのです。歴史の本のなかにではなくて、ぼく自身がもっているのです。そこに帰る。もういっぺんそこにつからないと、電気がつかないことがある。

あんまり人為的なことをやっていますと、人間は弱るんです。

弱るから、そこへ帰ろうということが起ってくる。

 それを真の自分だといっているのですね。

 ここで小林秀雄の語っていることは、現代に生きる私たちへのメッセージにもなっている。

 もう一度、自然に、原始に帰ってやり直すこと。

 私たちの記憶のなかに、原始時代も、直観も、智慧もあるのに、私たちは科学的知性とやらに頼って、そのことを忘れてしまった。

 今、人類が行うべきは、真の自分が何なのか、探り、そして「思い出す」ことなのである。

 本当は吾々の抱える諸問題を解決する鍵は自分の中にあるのに、私たちはそれを外にばかり探してきた。

 岡潔のいう「情緒」も「真の自分」=自然に帰ることにより、真の人間を建設しようというのが眼目なのだ。

 このように見てくると、小林の「記憶」と岡の「情緒」という言葉は共鳴し、私たちをして存在の最も根源なるもの、自然なるもの、聖なるものに誘ってくれる。

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著者:小林 秀雄
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                      ドイツ・ハイデルベルクにて


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