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批評の神髄・・27

 理想家という言葉は、ゴッホに冠させるには弱すぎる。というよりも所謂理想家は、自分の身丈に合わせた、恰好な理想論を捕らえるものだが、そういう理想ほど、ゴッホに遠いものはなかった。寧ろ、理想が彼を捕え、彼を食い尽くしたのである。・・小林秀雄「ゴッホ」

 小林秀雄が描いた天才達、ゴッホ、モーツアルト、ドストエフスキーたちに共通するのは、彼等が理想なるものに捕らわれて無私のドラマを演じているところだ。

 「則天去私」という漱石の言葉があるように、天の命じるままに彼等はそれぞれに与えられた役を夢中で演じていく。

 「無限なもの、究極のものへの飢渇が、絶えずゴッホを駆り立てていた」のであり、ドストエイキーの描いた主人公に関連して言えば、「ゲルマン風のムイシュキン」だったという。二人とも「この世のものとも思われぬ嵐を心に蔵していて、彼等を愛して、彼等の心を覗くものをも不幸にせずには置かない」。テオは狂死に導かれ、『白痴』のラゴージンは人殺しになる。

 彼等は限りなく限界を超えて、「無限なもの」(理想)にダイブしているようにも思える。そこに理想の渦が捲き起こり、周囲の人々をも巻き込んで、劇が上演されていくようである。

 ちなみに小林自身もある講演の中で次のように話していたものである。

 僕は最初は女を養うために書き始めたんであって、最初から理想があったわけではないんだ。書き進めるうちに、理想が出てきたんだよ。

 

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