« 批評の神髄・・11 | トップページ | 批評の神髄・・13 »

批評の神髄・・12

「人間が何かを見る、ということは、魅入られることだ。魅入られない以上、感動も、逆上もあるまい。魅入られたことを『かぶれ』とか『つきもの』という」

 小林秀雄が文字通り、桜に取り憑かれていたことは有名だ。

 妹の高見澤潤子さんによると、小林は昭和57年3月の末、急に発病して入院したが、十何日か経ち、桜の見頃になった。自宅のしだれ桜が満開になる頃、小林があんまり桜の花を見たがるので、主治医が特別に週末に帰宅を許してくれたという。

 ところが、その前の晩、強い風雨があって、折角の花は殆ど散ってしまった。家の者はがっかりして残念がり、昨日までどんなに綺麗であったかをつぶやいたが、小林は食い入るように、ほとんど散ってしまった桜をながめていた。

 そして高見澤さんは、小林の批評が窮極のところ、何であったのか、伺わせるエピソードを紹介している。

 病院に帰って兄は、今年は桜がみられないと思っていたのに、おかげさまで、すばらしいお花見が出来てありがとうございましたと、何度も主治医に御礼をいった。

 読者の皆様はこの小林の言葉をどう思われるだろうか。

 小林の云う「すばらしいお花見」とは、単なる御礼のための言葉に過ぎなかったのか。

 私はこう思う。

 ・・小林の心眼には、まざまざと桜の花が咲いていることが見えていたのだ・・と。

 明日に続く

 Rimg0642

小林秀雄全集 第2巻  Xへの手紙/小林秀雄/著 [本] 小林秀雄全集 第2巻 Xへの手紙/小林秀雄/著 [本]
販売元:セブンアンドワイ ヤフー店
セブンアンドワイ ヤフー店で詳細を確認する

|

« 批評の神髄・・11 | トップページ | 批評の神髄・・13 »

小林秀雄」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/143752/24144768

この記事へのトラックバック一覧です: 批評の神髄・・12:

« 批評の神髄・・11 | トップページ | 批評の神髄・・13 »