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批評の神髄・・6

 努めて古人を僕等に引寄せて考えようとする、そういう類いの試みが、果して僕等が古人と本当に親しむに至る道であろうか。必要なのは恐らく逆な手段だ。実朝という人が、まさしく七百年前に生きていた事を確かめる為に、僕等はどんなに沢山なものを捨ててかからねばならぬかを知る道を行くべきではないのだろうか。「実朝」

 小林の批評とは、徹底した「引き算の思想」ではなかったろうか。これを彼は「無私の精神」とも呼んでいるが、歴史上の偉人たちの真の姿が蘇ってくるには、一度、現代人の持つ考え、奢り、先入観を捨てる必要がある。

 謂わば偉人たちを現代人のレベルに落とすのではなく、私たちをして心を空しくして彼等の真の声を聞くために耳を澄ますことが大切なのだ。

 この意味では、小林の批評とはまさしく己を空しくするなかで偉人達と一つになり、その肉声をひたすら聞こうとする傾聴の批評でもあると思う。

 ただし、その「無私の精神」を得るために彼がどれだけ多くの毒を飲み、引き算に次ぐ引き算を行わなければならなかったか・・。そこには釈迦の空の思想にも似た否定精神の激しさと、火に焼かれるような己との闘いがあったに違いない。

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